とび・土工・解体の違いとは?建設業界の基礎知識

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とび・土工・解体の違いとは?建設業界の基礎知識を徹底解説

建設業界で事業を始める際、または建設工事に関わる際に必ず理解しておくべきなのが「とび・土工・解体」の違いです。これらは一見似ているように思えますが、実は工事内容、必要な許可、技術者要件など、多くの点で異なっています。特に平成28年の建設業法改正により、解体工事業が独立した業種となったことで、その違いはより明確になりました。本記事では、建設業に携わる方や、これから参入を考えている方に向けて、とび・土工・解体の違いを詳しく、そしてわかりやすく解説します。

とび・土工・解体工事の基本概要

建設業界において、とび・土工・解体は建設工事の基盤を支える極めて重要な工事業種として位置づけられています。これらの工事は、建設プロジェクトの初期段階から完了まで、さまざまな場面で必要とされ、それぞれ異なる専門性と高度な技術が求められます。

かつては「とび・土工・コンクリート工事」として一括りにされていましたが、建設業法の改正により、現在ではそれぞれが独立した業種として明確に区分されています。この変更は、各工事の専門性を認め、適切な技術者の配置と安全管理を徹底するために行われました。

とび工事業とは何か

とび工事業は、建設現場における高所作業のスペシャリストとして、足場の組立や鉄骨組立、重量物の運搬配置などを行う専門工事です。「とび」という名称は、江戸時代の火消しが機敏に動き回る様子から名付けられたとされ、現代でも建設現場の安全確保と作業効率向上に欠かせない重要な業種として認識されています。

とび職人には、高所での作業に対する恐怖心を克服する精神力、正確な作業を行う技術力、そして常に安全を最優先する意識が求められます。建設現場の「縁の下の力持ち」として、他の工事業種が円滑に作業できる環境を整える役割を担っています。

とび工事の具体的な作業内容

とび工事業が担当する作業は多岐にわたります。主な作業内容は以下の通りです:

  • 足場の組立・解体・賃貸:建設現場で最も重要な仮設設備である足場の設置から撤去までを担当します。作業員の安全を守る最前線の業務です。
  • 鉄骨・鉄筋コンクリート造の柱・梁等の組立:建物の骨組みとなる構造材の組立作業を行います。ミリ単位の精度が求められる繊細な作業です。
  • 重量物の運搬配置:重機では運べない場所への資材搬入や、精密な位置決めが必要な重量物の配置を行います。
  • クレーン等による荷揚げ作業:玉掛け作業や荷揚げ作業など、クレーンを使用した資材の運搬を担当します。
  • 鉄骨工事における建方作業:高層ビルなどの鉄骨構造物の組立において、中心的な役割を果たします。

土工工事業の特徴と業務範囲

土工工事業は、建設工事における最も基本的で重要な工程の一つです。土地の掘削や盛土、整地などの土木作業を専門とし、建設工事の基礎となる地盤づくりを担当します。どんなに立派な建物も、しっかりとした地盤がなければ成り立ちません。そのため、土工工事は建設プロジェクトの成否を左右する重要な工事といえます。

土工工事業者には、地質や土質に関する深い知識、重機の操作技術、そして現場の状況に応じた柔軟な判断力が求められます。また、近年では環境への配慮も重要となっており、土砂の適切な処理や周辺環境への影響を最小限に抑える技術も必要とされています。

土工工事の主な工種

土工工事業が扱う工事は以下のような種類があります:

  • 土の掘削・盛土・締固め:建設予定地の地盤を整えるための基本作業です。掘削では地質調査結果に基づいた適切な工法選択が重要です。
  • 整地・土留め・地盤改良:不安定な地盤を強化し、建設に適した状態に整える作業です。地盤改良工事では、薬液注入工法や置換工法など、様々な技術が用いられます。
  • しゅんせつ工事:河川や港湾の底にたまった土砂を取り除く工事です。水域の機能維持に不可欠な作業です。
  • 基礎工事における土工作業:建物の基礎を作るための掘削や埋め戻しを行います。構造物の安全性に直結する重要な工程です。
  • 法面保護工事:斜面の崩壊を防ぐための工事で、防災の観点からも重要な作業です。

解体工事業の業務内容

解体工事業は、建築物や工作物の解体を専門とする工事業です。平成28年6月1日の建設業法改正により、従来の「とび・土工・コンクリート工事」から独立した業種として新設されました。この改正の背景には、老朽化した建築物の増加、解体工事における安全管理の重要性、アスベスト問題への対応などがあります。

解体工事は単に建物を壊すだけの作業ではありません。周辺環境への配慮、有害物質の適切な処理、廃棄物の分別とリサイクル、騒音・振動・粉塵の抑制など、高度な技術と知識が必要とされる専門工事です。特に都市部の密集地での解体工事では、近隣への影響を最小限に抑えながら作業を進める繊細な技術が求められます。

解体工事業の具体例

解体工事業が担当する主な工事内容は以下の通りです:

  • 建築物の解体工事:木造住宅から鉄筋コンクリート造の高層ビルまで、あらゆる構造の建築物の解体を行います。建物の構造や立地条件に応じて、最適な工法を選択します。
  • 工作物の解体工事:煙突、橋梁、トンネルなどの大型構造物の解体工事です。高度な技術と特殊な重機が必要とされます。
  • アスベスト除去作業:健康被害を防ぐため、厳重な管理のもとで行われる重要な作業です。専門的な資格と知識が必須となります。
  • 産業廃棄物の適正処理:解体で発生した廃棄物を適切に分別し、法令に従って処理します。リサイクル率の向上も重要な課題です。
  • 内装解体工事:建物の骨組みは残したまま、内部のみを解体する工事です。リノベーション工事の前段階として需要が増えています。

とび・土工・解体の違いを比較

ここまで各工事業種の特徴を見てきましたが、ここでは具体的な違いを明確にしていきます。これらの違いを理解することは、適切な業種の許可取得や、工事の発注・受注において非常に重要です。

許可要件の違い

とび・土工工事業は建設業許可の29業種の一つとして古くから位置づけられており、解体工事業は平成28年に新設された比較的新しい独立業種です。それぞれに技術者要件や経営業務管理責任者の要件に特色があり、取得する許可によって施工できる工事の範囲が異なります。

とび・土工工事業の許可を持っている場合、とび工事と土工工事の両方を施工することができますが、解体工事を行うには別途解体工事業の許可または登録が必要です。この点は平成28年の法改正で大きく変わった部分ですので、特に注意が必要です。

工事規模と契約金額の違い

建設業においては、工事の契約金額によって必要な許可や登録が異なります:

  • 一般建設業許可:500万円以上の工事を請け負う場合に必要です。ほとんどの建設工事がこの範囲に該当します。
  • 特定建設業許可:発注者から直接請け負う工事で、下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)となる場合に必要です。大規模工事を扱う元請業者が取得します。
  • 解体工事業登録:500万円未満の解体工事のみを行う場合に必要です。比較的小規模な解体工事業者はこの登録で事業を行うことができます。

作業内容と技術の違い

とび工事は主に高所での組立・解体作業が中心となり、バランス感覚と高所作業への適性が重要です。土工工事は地盤に関する知識と重機操作技術が中心となります。解体工事は構造物の解体技術に加えて、環境配慮や廃棄物処理の知識が必要とされます。

建設業許可の取得要件

建設業許可を取得するには、以下の5つの要件を全て満たす必要があります。これらは建設業の適正な運営と、発注者保護の観点から定められた重要な要件です:

  1. 経営業務管理責任者の設置:建設業の経営業務について5年以上の経験を有する者を常勤で配置する必要があります。会社の経営を適切に行える人材の確保が求められます。
  2. 専任技術者の配置:営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関する国家資格者または一定の実務経験を有する技術者を専任で配置する必要があります。
  3. 財産的基礎または金銭的信用:一般建設業許可の場合は自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力が必要です。特定建設業許可の場合はより厳しい要件があります。
  4. 誠実性の確保:請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。
  5. 欠格要件に該当しないこと:暴力団関係者でないこと、過去に建設業許可を取り消されて5年を経過していないことなど、法律で定められた欠格事由に該当しないことが必要です。

解体工事業登録と建設業許可の違い

解体工事業には「解体工事業登録」と「建設業許可における解体工事業」の2つの制度があり、工事金額によって必要な手続きが異なります。この二重の制度は、小規模事業者でも適正に事業を行えるよう配慮されたものです。

工事金額が500万円未満の解体工事のみを行う場合は、都道府県知事への「解体工事業登録」が必要です。一方、500万円以上の解体工事を行う場合は、建設業法に基づく「建設業許可(解体工事業)」が必要となります。登録と許可では、技術者の要件や更新期間なども異なるため、事業規模に応じて適切な手続きを選択することが重要です。

技術者要件と経過措置について

解体工事業が独立業種となった際、技術者要件には経過措置が設けられました。平成28年6月1日から平成31年5月31日までの期間は、「とび・土工工事業」の技術者が解体工事業の技術者として認められていました。この経過措置により、既存の事業者がスムーズに新制度へ移行できるよう配慮されました。

しかし、現在では経過措置期間が終了しており、解体工事業固有の資格(一級または二級建築士、一級または二級建築施工管理技士、一級または二級土木施工管理技士、解体工事施工技士など)が必要となっています。これから解体工事業に参入する場合は、適切な資格を有する技術者の確保が必須となります。

業種選択の際の注意点

建設業許可を申請する際、自社の事業内容に合った業種を正確に選択することが重要です。複数の業種にまたがる工事を行う場合は、それぞれの業種について許可を取得する必要があります。例えば、とび工事と解体工事の両方を行う場合は、両方の業種の許可が必要です。

また、許可取得後も、実際に施工する工事内容と許可業種が合致しているかを常に確認する必要があります。許可を受けていない業種の工事を行った場合、建設業法違反となり、許可の取り消しや営業停止などの行政処分を受ける可能性があります。

まとめ:適切な理解で法令遵守の事業運営を

とび・土工・解体の違いを正確に理解することは、建設業界で適切な業務を行う上で極めて重要です。それぞれの工事業種には固有の特徴と要件があり、工事内容、必要な技術、許可要件など、多くの点で異なっています。

特に平成28年の建設業法改正により、解体工事業が独立業種となったことは大きな変更点です。この変更により、解体工事を行う場合は専用の許可または登録が必要となりました。既に建設業許可を持っている事業者も、解体工事を行う場合は追加の許可取得が必要となる場合がありますので、注意が必要です。

適切な許可や登録を取得し、法令に従った事業運営を行うことで、信頼される建設業者として長期的に事業を発展させることができます。不明な点がある場合は、都道府県の建設業許可担当部署や、建設業に詳しい行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

建設業界は社会インフラを支える重要な産業です。正しい知識を持ち、適切な許可のもとで、安全で質の高い工事を提供していくことが、業界全体の発展につながります。本記事が、皆様の建設業に関する理解を深める一助となれば幸いです。

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